2016年6月18日

高齢者に運転免許証を返納させる方法。


高齢者のドライバーによる交通事故を減らすため、65歳以上の人を対象に免許を自主的に返納する制度がある。ただ、中には、免許証を返納せずにバイクや自動車を運転する人もいて、高齢ドライバーの事故が減っていかない。

大阪府/高齢者運転免許自主返納サポート制度について


では、どうすれば運転免許証の返納を促進できるか。

免許証を返納すると、運転経歴証明書が交付される。見た目は免許証に似ているが、運転はできない証明書なのが特徴。

運転ができないのに、運転経歴証明書には何の意味があるのと思うところだが、この証明書を提示すると、サポート企業による特典が受けられる。例えば、お店で食事をすれば、飲食代金が割引されるとか、何かを購入すれば割り引きされるとか、粗品が進呈されるとか、中にはフライパンを貰えるなんていう特典もある。

これらは免許証を返納することへのインセンティブなのだが、細々とした割り引きではインセンティブとしては弱い。

何らかの動機、うま味、メリットがなければ人は動かないもの。単に「返納してください」と求めるだけではうまくいかない。

なんだかんだと割り引きするのも1つの方法だけれども、「それなら、返納しようかな」と思わせる「美味しいニンジン」が必要だ。




食べ物、飲み物、商品購入割り引きなどは悪い内容ではないが、免許証を返納しようという気になるほどの魅力がない。免許証を返すということは、移動手段を放棄するということでもあるのだから、交通費を割引する方が効果的だろう。

例えば、交通費補助クーポンを出すのはどうか。移動の手段として使う道具が免許証なのだから、その代わりになるものが必要になる。

クルマやバイクに乗れない代わりに、交通インフラをリーズナブルに使えるならば、免許証を返納するのも悪くない。クーポンが返納のインセンティブになるわけだ。

とはいえ、運輸系のサービスではすでに高齢者割り引きがあるので、それと競合するのが悩み。

例えば、大阪市の市バスに乗る場合、1回50円で乗っている高齢者の人がいる。敬老優待乗車証というものが大阪市にはあって、年間3,000円を支払い、利用時には1回50円の負担で済むようになっている。

通常料金は、大人は210円、小児は110円なので、50円になるならば格安だ。ただ、年会費を3,000円、前払いで回収しており、なかなか巧みな方法で費用を回収している。

ここに、さらに運転経歴証明書を使って割り引きを入れ込むとなると、なかなか難しい。すでに格安料金なので、さらなる割り引きが入り込む余地が無い。

公営の交通インフラは高齢者向けの割り引きがあり、コミュニティバスにも高齢者割り引きが存在する。また、JRにもシルバー割り引きがある。


すでに色々と高齢者向けの割り引きが存在する状況で、運転経歴証明書を使うとなると、例えば、支払いで使えるICカードにチャージを入れるのはどうか。例えば、運転経歴証明書を提示して、ICカードに3,000円チャージすると、チャージ額が10%増えて、3,300円がチャージされると嬉しい。この増額チャージが交通費補助クーポンに相当する。

各交通インフラサービスで、運転経歴証明書を所持している向けのメニューを独自に作るとなると、メニューコストが高くなる。しかし、上記のチャージ割増で一本化すれば、ICカードを各社で使いまわせるし、独自にメニューを新設する必要もなくなる。電車でも、地下鉄でもバスでも、さらに決済方法が対応しているならばタクシーでもクーポンを使える。

さらに、単純に料金を無料化するのではなく、支払ったチャージ額を割り増す方式なので、業者側の負担(政府が増額分を補填するならば、行政側の負担)も少なくできる。


免許証の代わりとなる移動手段(交通系ICカードへのチャージ割増)を提供しながら、運転免許証の返納を促進し、交通サービスを利用する人を増やす(自家用車の利用を減らせるのも良いところ)。まさに一石三鳥の方法だ。



交通機関で優待されるサービスがないと、免許証を返納する気にはなりにくいもの。「免許証 = 移動手段」なのだから、運転経歴証明書も移動手段として使えるものにならないといけない。そのためには、交通サービスを使う際に何らかの「ニンジン」を提供しておくのが効果的だろう。

飲み食いを割り引きするのも悪くないが、免許証を返納させるとなると、ピントがズレている。あっていいけれども、交通費の割り引きがまず必要だ。