AppleのLightning - Digital AVアダプタは、ただのミラーリングアダプタではない。
iOS デバイス、iPhone や iPad の画面をテレビやディスプレイに表示しようと思えば、AirPlay機能を利用できるAppleTVを使わなきゃいけないところだが、 Lightning - Digital AVアダプタを使えば、アダプタとHDMIケーブルでiPhone や iPadの内容をテレビやディスプレイに表示できる。
筆者は、テレビに接続するためのアダプタとして使っているが、コレ、単に画面を映し出すだけじゃないのだ。
Lightning - Digital AVアダプタを接続して、HDMI ケーブルでテレビに繋ぐと、iPhone の画面がテレビに表示されるわけだけれども、接続しただけだと単に画面をテレビにミラーリングしてるだけに見える(実際そうなのだが)。
しかし、アプリケーションを立ち上げて動かしてみると、単にミラーリングしてるだけじゃなくて、AirPlayに近い使用感が得られる。ミラーリング用にカスタマイズされた表示になる、と表現すれば近いのかも。
アダプタとHDMIケーブルを使った有線接続だから、「Air」な状態じゃないが、ミラーリングした状態だと、Appleが用意している機能である AirPlay に限りなく近い状態になる。
例えば、アダプタでiPhoneをテレビと接続した後、YouTubeアプリを起動すると、AirPlayで接続した状態になる。ビデオを再生している間は、テレビ側で映像と音声が出力され、iPhone 側では一時停止や巻き戻し、早送りのボタンが表示されている状態になる。映像と音声はテレビの方に行き、iPhoneは言うなればリモコンのような状態になるわけだ。
オンラインミーティングでカメラと画面を分離できる
オンラインミーティングでiPhoneを使ってると、他の参加者に顔の正面をずっと見せることになり、なんだかちょっと間抜けな感じになりがち。他のオンラインミーティング参加者も、自分と同じように、ずっと正面を向いたまま会話に参加しているのが普通になっているかと。
オンラインミーティングに参加してる人は、大体正面を向いていて、少し斜めを向いているとか、横を向いているという人はほとんどいない。
正面の顔を見せなきゃいけないっていうものじゃないし、ちょっと斜め、それこそ斜め45度とかで、自分にカメラを向けておけば、間抜けな感じもなくなるんじゃないか。
iPhoneの画面を見ると、インカメラに顔が映る。端末の表側にカメラのレンズとディスプレイが付いているため、iPhoneだけ(他のスマートフォンでも同じだが)でオンラインミーティングに参加すると、どうしても画面を正面で見とかないといけなくなる。画面とカメラが同じ位置にあるため、ずっと正面を向き続ける形になり、全員が前を向いている状態になる。
なぜ全員が正面を向いてるのか、もっと色々な角度の表情があってもいいんじゃないかと思うのだが、そうなっていないのが不満だ。
そこで、Lightning - Digital AVアダプタでテレビなりディスプレイにiPhoneを接続すれば、カメラの位置を好きに変更できる。つまり、iPhoneのディスプレイを見続ける必要がなくなり、カメラの角度を変えて、斜めの顔や横顔でオンラインミーティングに参加できるようになる。
例えば、Lightning - Digital AVアダプタを使って、ディスプレイないしテレビに接続すれば、他の人の顔はディスプレイやテレビに映ってるので、そちらに自分の顔が向く(カメラを見つめる必要がない)。一方、iPhoneのカメラはまた別の位置に設置して、自分の顔を横や斜めから映るようにする。
正面の顔は、何だが間の抜けた感じに映るし、スマートな感じじゃない。みんなが画面に向かって正面を向いているのも気持ち悪いじゃないか。もっと色々な角度を付ければ、それぞれの違いが出てくるし、相手からずっと見られている感じも希薄化できて、お互いに楽になるんじゃないか。正面を向いている人がズラッと画面に並んでいたら、妙にプレッシャーを感じるからね。
画面とカメラの位置を分離することができるのが、AppleのLightning - Digital AVアダプタが持つ利点の1つ。特にリモートミーティングの時は役に立つはずだ。
おまけに付け加えると、ビデオを撮影するとき、サブモニターが欲しいときにもAppleのLightning - Digital AVアダプタを使える。iPhoneのアウトカメラでビデオを撮影したいとなれば、映っているいる内容を確認したいところだが、画面が向こう側を向いているため、セルフィ撮影だとどう映っているかチェックできない。そこで、AppleのLightning - Digital AVアダプタをHDMIモニターなどに接続し、アングルを確認しながらビデオを撮影できる。
この汎用性の高さもApple Lightning - Digital AVアダプタの良いところ。使いみちが多ければ、それだけ「モトを取りやすい」というわけだ。
どのビデオアプリをミラーリングできるか
テレビでビデオ・オンデマンドサービスを使えると期待して、アダプタを購入する方もいるだろうから、よく使われるビデオサービスとの相性を書いておく。
ちなみに、動作を確認したのは、iOSのバージョンは13.7。Appleが作ったアダプタだから、相性には何ら問題なかった。
サードパーティ製だと、認識しなくなったりして、安物買いの銭失いになる可能性があるが、Apple製のLightning - Digital AVアダプタなら、その点は心配ない。
ビデオアプリと言うと、Amazon プライムビデオや YouTube、民放の地上波テレビをインターネットで見るためのTVerがある。さらに、NetflixやDMM動画などもあり、こういったビデオアプリで表示されるビデオを、テレビやディスプレイにミラーリングできるかどうか。
ちゃんとミラーリングできて、ビデオを視聴できるのかどうか。Apple Lightning - Digital AVアダプタ を購入するかどうかを検討している人には気になるところ。
AmazonPrimeビデオ
アダプタをテレビに接続して、Amazon プライムビデオを視聴できるかどうか。iPhoneを接続してみたところ、テレビの方で全画面でビデオが再生され、映像も音声も問題なく出力された。
著作権関連の制限が課されることはなく、ビデオを再生するに支障となる問題は起こらなかった。
さらに、iPhoneの画面をスリープ状態にして、画面を消したとしても、テレビの方のビデオはそのまま再生され続ける。そのため、ビデオの再生が始まったら、iPhoneの画面はスリープボタンを押して消してしまってもいい。
感覚としては、ChromecastやFire TV StickでAmazonプライムビデオを見ている状態に近い。
YouTube
YouTubeでビデオを再生すると、「AirPlayに接続しました」とiPhoneの画面に表示される。
iPhone側では専用画面にカスタマイズされていて、ただのミラーリングではなく、スマートフォンの画面をテレビに映しているだけじゃなく、YouTube向けにAirPlayに対応した画面が表示される。
Amazon Primeビデオと同じように、YouTubeも快適に利用できる。
TVer
地上波テレビのドラマなどを見れるTVer アプリ。このアプリもAppleのLightning - Digital AVアダプタでミラーリングできるかどうか試してみたところ、テレビの画面にTVerの番組を表示することはできた。つまり、ビデオの再生は可能だった。
しかし、YouTube や Amazon プライムビデオと違って、専用の画面にカスタマイズされることなく、iPhoneの画面が単純にテレビに映し出されているだけになる。
AssistiveTouchのボタンもテレビに表示されていて、純粋にミラーリングしているだけの状態。
さらにiPhoneの画面をスリープさせると、テレビの方のビデオも止まってしまう。だから、TVerで番組を見ている間は、ずっとスマートフォンの画面を点灯させ続けなきゃいけない。
スマートフォンでビデオが再生されて、テレビの方でも同じビデオが再生されてしまい、両方の画面で表示され続けるので、テレビの方を見るならば、スマートフォンの画面を点灯させるは無駄で、バッテリーの無駄遣いになってしまう。
AppleのLightning - Digital AVアダプタを経由してTVerのビデオを視聴すると、iPhoneの画面をそのまま映し出すだけで、スリープもできない。この点が欠点と言える。
ただ、テレビの画面でTVerの番組を見れるのだから、この程度のデメリットなら受け入れざるを得ないか。ChromecastやFire TV Stickを使わずにTVerをミラーリングできるなら、文句は言えない。
nasne mobile
テレビ番組を録画できるSONYのnasne。iPhoneやiPad にnasne mobileアプリをインストールすると、それらのデバイスから録画した番組を見れる。
ならば、Lightning - Digital AVアダプタを接続し、nasneに録画した番組をテレビなりディスプレイにミラーリングできるかどうか。
結論から言うと、Appleのアダプターを経由して、nasneに録画した番組をテレビやディスプレイに全画面で再生できない。残念だが。
アダプタを接続して再生しようとすると、著作権法上の制限がある旨の表示が出て、ビデオを再生することはできなかった。一方で、予約状態の管理、番組の録画予約はもちろん可能。
残念だけれども、nasneに録画した番組をLightning - Digital AVアダプタ経由で再生することはできない。
Amazon music
音楽ストリーミングの場合は、音だけテレビやディスプレイ側から出る。画面はiPhoneのものをそのままミラーリングする。
音楽アプリをミラーリングすると、再生される音楽の音だけがテレビやディスプレイから出てくる。一方、映像の方は、スマートフォンの画面をそのままミラーリングするだけの状態になる。
テレビに立派なスピーカーが付いているなら、アップルのアダプタを接続して、Amazon Musicの音楽を再生するのもいい。
ちなみに、音量調整はテレビやディスプレイ側で行い、iPhone側ではできない。
Keynote
プレゼン用に使うKeynote。iPhoneでKeynoteを起動し、アダプタを接続した後、スライドを再生すると、全画面で表示される。
プレゼン用のソフトとして使われるKeynoteだが、iPhoneをテレビや大型ディスプレイに接続して、スライドを再生させると、画面に全画面でプレゼンのスライドを表示できるため、他の人に見せる状況で使うには良い機能だ。
ChromecastやFire TV Stickの代わりになるか。
スマートフォンからミラーリングできるなら、「じゃあ、ChromecastやFire TV Stickは要らないんじゃないか」と。
アダプタとHDMI ケーブルがあれば、AmazonプライムビデオもYouTubeもテレビで見ることができるわけだから、Chromecast や Fire TV Stick がなくてもいいんじゃないかと思ってしまうところ。
確かに、ビデオを視聴するだけなら、このアダプターだけでも足りる。
Lightning - Digital AVアダプタとHDMIケーブルを持ち出して、外出先のテレビに接続すれば、ビデオを視聴できるし、 Chromecast や Fire TV Stick を買う必要がなくて、アダプタの購入代金で済むわけだから、費用面でのメリットは確かにある。
しかし、Chromecast や Fire TV Stick は、単独で動くデバイスなのが特徴。それぞれが独立したコンピューターとして作動するので、その点でアダプターとは違う。
Chromecast や Fire TV Stick が作動している間も、スマートフォンやタブレットは別で使える。 ChromecastなりFire TV Stick でビデオを再生しているときに、他のアプリを立ち上げてもビデオは止まらない。ビデオを再生しながら、iPhone 側でメールを読めるし、天気予報を見ることもできる。さらに、他の操作を iPhone ですることもできる。
ビデオの再生は Chromecast や Fire TV Stickが単独で担っているから、iPhone では他の操作をしても構わない。
一方で、Lightning - Digital AVアダプタを使った場合は、あくまで iPhone なり iPad のハードウェアを使うため、アダプタが単独で作動するわけではなく、iPhone や iPad の操作に連動してアダプターが動いている。
だから、アダプタ経由で Amazon プライムビデオを見ている時に、iPhone の方でメールをチェックしたり天気予報を見たりすると、ビデオが中断されてしまう。
あまりに上手くLightning - Digital AVアダプタがミラーリングするものだから、アダプタで接続している間、スマートフォンでメールを見たり、天気予報をチェックしたりできそうだが、それをすると画面が切り替わる。
ビデオを再生しながら、他のアプリも使えるんじゃないか。そう思ってしまうほど出来が良いミラーリングなので、別の操作もしたくなる。しかし、画面を切り替えると、テレビやディスプレイに映し出されている内容も切り替わるので、ビデオを視聴している間は、マルチタスクでデバイスを使えない。
Chromecast や Fire TV Stickだと、ビデオ再生中であっても、iPhoneで別の操作が可能なので、この点ではアダプタは劣っていると言える。単独では動かないので、仕方のないことだが。
HDMIケーブルは高品質なものを使うべき。
安物の HDMI ケーブルを使って iPhone とこのアダプタを接続すると、画面に小さな横線がたくさん入るノイズが発生した。音声は問題なかったが、映像がノイズで少し乱れていた。
アダプタそのものに何か不具合があるのかと思ったが、別の HDMI ケーブルに交換して、再度接続してみたところ、映像も音声も問題なく転送できた。
HDMI ケーブルは安物ほどケーブルが細い傾向があって、ノイズが入った時も、細い HDMI ケーブルを使っていた。そのため、なるべく品質が高い、太めの HDMI ケーブルで接続するのがお勧め。
アダプタの価格は5,800円。これは高いかどうか。
値段だが、Lightning - Digital AVアダプタは5,800円もする。この価格を高いという人もいるけれど、iPhone や iPad をテレビやディスプレイにつなぐだけのアダプターと考えれば、確かに5,800円という値段は高く感じる。
しかし、単にミラーリングするだけの機能を持ったアダプタではなくて、ビデオアプリを再生した時の使用感は、Chromecast FireTV Stick とほぼ同じぐらい快適だ。
それらのデバイスを買わずに済んだと考えれば、5,800円という値段は高いというよりもむしろ安いぐらい。Chromecast と Fire TV Stick 両方買えば、10,000円ぐらいにはなる。その1/2程度の価格でアダプターを買えたということになる。
さらに Keynoteアプリを使うことで仕事でも使えるし、オンラインミーティングの時に画面とカメラを分離することができ、正面の顔を晒すこともない。
このアダプタの汎用性の高さを考えれば、5,800円という価格はやはり高いとは言えないし、むしろリーズナブルではないか。
使う範囲を広げれば、それだけ利用価値も高まるわけだから、購入する前は5,800円という価格が高いと感じても、使っていくうちに実は安い買い物だったと感じるはず。
単純に、見た目だとか、機能に着目して、それらと値段を比較するだけで、モノの価値を判断できるものもあるけれども、このアダプターは実際に使うことで5,800円を超える価値があると感じられる。
アダプタを充電しなくても使える
HDMIの差込口の隣にLightningケーブルを差し込むところがあるが、これは充電用で、ミラーリングしながら充電できるようになっている。
充電しないとアダプタを使えないのかと思えるが、実際は充電しない状態でもミラーリングはできる。
アダプタ本体に電源を用意するためにライトニングケーブルを接続するわけではなく、ミラーリング機能を使ってると、iPad や iPhone のバッテリーの減りが早くなるので、ミラーリングしながら充電もできるように HDMI ケーブルの差込口の隣にLightningケーブルの差し込み口を設けているというわけ。
また、アダプタを接続すると、1つしかない充電口が塞がってしまうので、HDMIケーブルの差込口の隣にLightningケーブルを差し込めるようにしているとも考えられる。