英語の長文読解問題を解くには、エッチラオッチラと問題文を読んでいては間に合わない。100行も150行もの英文がズラリと問題文として提示されているのに、日本語に訳読していては、読むだけで制限時間が過ぎてしまう。
成績が上がらないダメ受験生の典型は6種類。
日本人の発音が悪い理由は、(1)「呪い」タイプと、(2)「サイボーグ」タイプ。
正しい音読の方法は、ただ…するだけでいい。
「速読」なんて必要ない。音読で十分な理由。
英単語は長文で覚えるな。
英作文はパラグラフ・ライティングで、スラスラ書ける。
リスニングの対策にも音読が有効な理由。
グローバルな仕事に就きたいなら、音読で英語上級者を目指そう。
(Amazonのウェブサイトより)
私が受験生だった頃、英語の長文問題を解く手順としては、先に設問を読み、どういう問題文なのかを推測し、それから問題文を読んでいた。この方法は間違ってはいないのだけれども、これでは制限時間には間に合わなかった。
問題を解くには問題文を全て読まないといけない。そう思い込んでいた時期があり、せっかく設問文から読んで、英文の内容を推測していても、問題文を訳読してしまっては時間のロスが多くなる。
制限時間内に問題を解けない。その悩みを解決したのが今井先生のパラグラフリーディングシリーズだった。今井先生というのは、今井宏 先生のことで、昔は代々木ゼミナールで英語を担当していた方。2015年現在では東進ハイスクールの講師になって、今も高校生に英語を教えている。
高校生の頃は、パラグラフリーディングなんて知らなかったので、英文を読んで問題を解くものという先入観があった。誤解なきように言っておくと、パラグラフリーディングだから英文を読まなくていいというものではなく、必要な英文を必要なだけ読む。これがパラグラフリーディングの核心部分だ。
代々木ゼミナールを辞めると代々木在籍時に発行した本は廃刊になるようで、今はパラグラフリーディングシリーズの本を新品で購入することはできない(中古本の流通はある)。このシリーズは3部作になっていて、1部がスーパー速読編。2部がスーパー精読編。3部がスーパー完成編という分け方になっている。
今井の英文読解パラグラフリーディング―代々木ゼミ方式 (1)
今井の英文読解パラグラフリーディング―代々木ゼミ方式 (2)
今井の英文読解パラグラフリーディング―代々木ゼミ方式 (3)
最初は半信半疑だった。半信半疑というと50:50なのだけれども、実際は信じている割合が20で、疑いが80ぐらいの割合だった。だって、怪しいじゃないか。パラグラフリーディングだなんて。何だか技巧的な感じで、ゴマかしながら英文を読んでいくノウハウのような感じがして胡散臭かった。
とはいえ、1部のスーパー速読編は1,000円ぐらいだったから、「まぁ、試しにやってみるかな」という感じで買ってみた。
実際に出題された大学入試の問題を使ってパラグラフリーディングの技法を紹介していたが、それまでの読み方とは随分と違っていた。以前は、設問を読んで、問題文を読む。漫然とした方法で問題を解いていたのだが、パラグラフリーディングを知ってからは、目的を持って読み進められるようになった。
パラグラフリーディングは、SKIM、SCAN、ANTICIPATIONという3つのアプローチから構成されている。
SKIMとは、設問文を使って問題文のテーマや内容を、本文を読む前に予めザックリと把握するもの。設問文や選択肢に含まれる名詞をピックアップして、何について書かれた英文なのかを把握する。動詞や副詞は見ないのがポイント。動詞と副詞は変化して、読み手をミスリードさせるため、SKIMの段階では排除して、名詞だけに着目する。
SCANとは、そのままで調べるとか走査という意味。SKIMで問題文の内容を把握し、設問では何を求めているかを知ったので、その設問を解くために必要な箇所を探して確認する。これがSCAN。
ちなみに、読むべき箇所とそうではない箇所を選別するのもSCANに含まれる。問題を解くために、問題文を必要な箇所を必要なだけSCANするわけだ。
ANTICIPATIONというのは、日本語では予測という意味だが、SCANで英文を調べながら、先の展開を予測するのがANTICIPATION。
例えば、太陽が東の地平線から顔を出したならば、その先はどうなるか。昼には上に太陽が来て、夕方になれば西の方角へ太陽は沈んでいくんだろうと予測できる。これがANTICIPATION。
他にも、地球温暖化に関する英文ならば、二酸化炭素が増えていくとどうなるか。気温が上昇し、日本列島が熱帯化するとか。海面上昇で海抜が低い場所が海に沈むとか。排出権取り引きが活発化するとか。国家間の協調的な取り組みとか。電気自動車の開発とか。このような内容を予測できるはず。これもANTICIPATIONに含まれる。
パラグラフリーディングは、英文法や単語を習得しているのは当然ながら必須だが、英語以外の知識も総動員するのが特徴。単語と文法だけでゴリ押しして英語の問題を解くことも不可能ではないが、苦戦するはず。
長文読解問題を正攻法で解く方法を教えてくれたのは、このパラグラフリーディング三部作だった。この3冊は今でも捨てずに押入れの中で記念に持っている。
今井先生の新刊書『さあ、音読だ』をAmazonで買おうかと思い検索したところ、2週間から4週間、入荷待ちとなっていたので、どうしたものかと悩んだ。すぐに読みたかったので、半年も1ヶ月も待ってられない。そんなに待っていたら、読みたい気持ちが薄れてしまう。鉄は熱いうちに打てと言うのだから、読みたい気持ちも熱いうちに開放させたい。
この新刊書を知ったのは、今井先生のブログで紹介されたのがきっかけ。音読についてはずっと昔から延々と、懇々と伝えていたので、「とにかく声を出して読むんだ」と伝えたいための本なのだろうと。
Amazonで在庫がなかったし、ちょうど500円分の図書券を持っていたので、図書券の消化も兼ねて、近所の書店で在庫があったので購入した。ただ、探す時はちょっと苦労した。新書だから、新書コーナーにあるのかと思い、探したが無い。じゃあ、英語の参考書コーナーにあるのかと思い、参考書のコーナーを回ったが見つからない。これじゃあ埒が明かないので、書店の店員さんにAmazonの『さあ、音読だ』の販売ページをスマホで表示し、それを見せて探してもらった。書店でAmazonのページを見せるなんて、何だかヘンな感じだが、探している本を伝えるには最も便利で効果的だろう。
数分かかったが、店員さんが探して持ってきてくれた。一体どこに陳列されていたのかは分からずじまいだったが、購入できたので気にしないことにした。
読んでいると、「おや? どこかで読んだような内容だな」と過去の記憶に合致する部分がチラホラ。思い出してみると、パラグラフリーディングシリーズで書いていた内容を若干の修正を加えて転載していると分かった。
ラジオにロシアの放送が入りこんだ話。模試の判定がEだった話。墾田永年私財法まで音読した話。単語集の話。音読の回数をハンコでカウントする話。試験当日の過ごし方に関する話。学部選択の話。合格発表の日に関する話など。他にもパラグラフリーディングシリーズから引っ張ってきている内容はあると思うが、過去にパラグラフリーディング三部作を使っていた人が『さあ、音読だ』を読めば、「あぁ、あそこで書いていたよな」と思い出すはず。
パラグラフリーディングシリーズでは、「3時間でTIMEを読破する」という本を書くと言及していたが、2015年時点ではまだそのような本を書いていないらしい。3時間というのは、東京から大阪まで、東海道新幹線のひかりで移動すると、だいたい3時間になるから。
東京駅から乗り込んだビジネスマンが、アタッシュケースからTIMEを取り出し、目的地の新大阪駅に着くまでに1冊のTIMEを読み終える。そういう話を確かパラグラフリーディングの3部であるスーパー完成編の最後で書いていたように記憶している。
今では2時間ちょっとで大阪と東京を移動できるので、2時間で読破しないといけない。さらに、リニア中央新幹線ができれば、もっと時間は短縮され、東京から大阪まで約1時間だから、「1時間でTIMEを読破する方法」じゃなければいけない。
ドンドンと条件が厳しくなっていくが、パラグラフリーディングを使ってTIMEを1時間で読破するなんて随分と挑戦的じゃないか。
パラグラフリーディングに関する本は代々木ライブラリーの頃からまだ出版されていないが、新しい本が出版されれば、是非とも読ませていただきたい。