2016年1月24日

2016年4月から電力販売が自由化されるが、電気をどこから買うか。


2016年4月から、電力会社以外の会社から電気を購入できるようになる。2011年3月11日に起こった福島第一原発事故がきっかけで、電力会社以外の業者からも購入する電気を選択できるようになった。

今までずっと電力会社から電気を買うのが当たり前だったので、いざ他の会社から買うとなると、迷ってしまうはず。

大阪では関西電力を使っている家庭ばかりだが、2016年4月以降の選択肢は色々とあり、どれにするか悩んでいる人も多いだろう。

ざっと業者を挙げると、KDDIのauでんき、ENEOSでんき(まだ関西圏ではサービスを開始せず、最初は関東圏から)、ソフトバンクでんき、大阪ガスでんき、eoでんき、など。軽く調べただけでも選択肢は5つある。

・電気を販売する会社を選ぶ基準は何か。
・各社の特徴は?
・セット割引は魅力なのか。

これらの点を主に調べてみることにする。





販売会社を選ぶ基準は?

電気を購入する際には、料金を基準に選ぶ人が多いので、1kWhあたりの料金を比較するといい。割引やキャッシュバック、ポイントなど、付帯的な"ニンジン"も用意されているが、まずは1kWhあたりの料金を比較する。

概ね電気を多く使うほどお得になるのが各社の傾向だ。あまり電気を使わない人は今のまま電力会社から買ったほうが安いケースもある。おそらく、1人暮らしならば、販売会社を電力会社からチェンジしないほうがいい。

電気を販売する小売業者が増えると、さらに電気がコモディティ化する。生活必需品はコモディティ化するのが常だ。電気水道ガス、これらは必需品で、消費者は料金が安ければ安いほど良いと考える。卵や砂糖、携帯電話、ガソリンや灯油も同じ。


各社の特徴は?

まずは通信会社のでんきサービスから紹介しよう。

ソフトバンクでんき

ここは従量制と定額を組み合わせているのが特徴。他社の場合は、従量単価に段階を設けているが、ソフトバンクでんきは300kWhまでは定額で月額7,440円。1kWhあたりに換算すると24.8円。

個人家庭向けのプラン。

300kWhまで:7,440円
300kWh超400kWhまで:27.4円/kWh
400kWh超:30円/kWh

定額部分で未使用だった枠は、Tポイント(最大100kWhまで)かデータ枠で還元される。

ただ、100kWhで1,000ポイントなので、24.8円/kWhの単価だとすると、2,480円 - 1,000円 = 1,480円をロスする計算になる。

300kWhの枠を必ず買わなければならず、残った枠は1kWhあたり10円でポイントバックするので、お得な感じはあまりない。


auでんき

スマホで攻めるKDDIだが、auでんきは他社に比べて1kWhあたりの単価が高い。

単価が高めのauでんき。でんきMプラン。
最初の15kWhまで:373.72円(実質的に基本料金となる)
15kWh超120kWhまで:22.82円
120kWh超300kWhまで:29.25円
300kWh超:33.31円

ちなみに、関西電力従量電灯Aの単価は以下のとおり。

関西電力従量電灯Aの単価。
15kWh超120kWhまで:22.83円
120kWh超300kWhまで:29.26円
300kWh超:33.32円

auでんきと比べると、関西電力の単価を0.01円だけ低くしたものがauでんきの単価になっていると分かる。

関西地域限定でキャッシュバックの増量がある(最大12%還元。期間は1年間)のは特徴だが、単価の高さを考えると、両者が相殺され、さほどお得にはならないように思える。

仮に、auでんきの料金が10%割引されると考えても、月額8,000円以上の電気代を支払っている家庭(300kWhを超えて電気使っている家庭)が対象なので、ややハードルが高い。

キャッシュバックするぐらいならば、最初から単価を低くしている方が分りやすくて選びやすいのだが、キャッシュバックという言葉に反応するのが人間なので、こちらの方が集客しやすいのだろう。



ドコモでんき

ドコモのでんきサービスは、2016年1月時点でまだ発表されていないが、ネット上の情報では中部電力と一緒にサービスを提供するようだ。

ソフトバンクが東京電力。KDDIが関西電力。となると、ドコモは東北電力、九州電力、四国電力、北海道電力、中部電力から選ぶところだが、全国区のサービスとなると、中部電力が妥当な選択になる。何だかめんどくさいテリトリー意識を感じるが、まぁ業者同士の都合なので仕方ない。

まだサービスを発表してこないので、ドコモユーザーはやきもきするところだが、もうちょっと待つしかなさそうだ。

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eo電気

eo光ユーザーならば選択肢に入るだろうが、eo電気を選択するならば、多量に電気を使っている家庭でないとお得にならないので、要シミュレーションだ。

従量単価が他社だと3つあるが、eo電気は1kWh:25.92円の1つしかない。そのため、電気の消費量が少ない場合は、割高な単価となる。

eo電気の単価。
25.92円/kWhなので、ソフトバンクでんきの料金プランに似ている。ソフトバンクでんきは月額7,440円からと固定されているが、eo電気は従量タイプ。

試しに、月間300kwhで計算したが、これだと関西電力の方が安い。月間で300kwhだと一般家庭では多い方だが、それでも関西電力が割安になる。

ケイ・オプティコムは関西電力の連結子会社であるため、関西電力と競争するようなプランを提示できないのがボトルネックとなる。

小容量ならば関西電力。大容量ならばeo電気。そういう棲み分けをしようという意図が伺える。

eoユーザーであっても、月間他社のでんきサービスを検討する方が賢明だろう。


関西電力と競争できないKDDIとケイ・オプティコム

スマートバリューでKDDIと関西電力(子会社のケイ・オプティコム)はコラボしているので、関西地域に限定してauでんきが特別な施策を設けているのは自然な流れ。

ただ、ケイ・オプティコムとKDDIは関西電力に気を使って、あまり攻めたプランを提示できない。主力サービスであるスマートバリューを維持するには、お互いに仲違いするわけにはいかないので、痛し痒しの状態だ。



ENEOSでんき

ENEOSでんきは単価が安いのが特徴。他社に比べて1kwhあたりの料金が安い。

ENEOSでんきの単価。
最初の120kWhまで:20.76円
120kWh超300kWhまで:23.26円
300kWh超:25.75円

他社の単価と比べると分かるが、単価ではENEOSでんきが最も安い。

ただ、選択肢としては有力だが、2016年4月時点では関東圏からサービスインするので、関西地域の人は利用できない。使えるならばENEOSでんきを使いたいが、大阪に住む人はまだ選べない。

単価の安さはエネルギー企業ならではの強みだろう。

通信会社は電気を買って販売する代理店のようなものだから、どうしても単価は高くなりがち。そのため、キャッシュバックやポイント、月間データ枠の増量などで集客する必要がある。しかし、エネルギー企業の場合は、自らがコントロールできる範囲が広く、単価そのものを低く設定できるのが有利なところ。

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大阪ガスの電気

関西圏では馴染みがあるし、中高年の人は大阪ガスの電気を好むのではないか。大阪ガスのブランド力、親しみやすさ、安心感、親近感もあるので、選びやすい。

大阪ガスの電気単価。
最初の120kWhまで:22.78円
120kWh超200kWhまで:25.46円
200kWh超300kWhまで:26.08円
300kWh超:32.60円

都市ガスとのセット割引もキチンと用意されている。スマホを使わない世帯、メンドクサイ手続きが嫌いな人にはオススメ。

セットでも、セット無しでも割引がある大阪ガスの電気。

他社に比べてあまり大々的に宣伝していない大阪ガスの電気だが、ポイントやキャッシュバック、スマホとセットなど複雑な仕組みがなく、シンプルなのが好印象。都市ガスとのセット割引はあるが、セット無しでも割引があるのが嬉しい。

また、他社は電気の使用量が多い人(月間500kWh以上)にはリーズナブルだが、それよりも少ないとむしろ割高になるケースがある。しかし、大阪ガスだと、使用量が少なめ(月間250kWhぐらい)であっても割安感が出る。

通信会社のでんきサービスは、とにかくセット、セットと、ケータイと一緒に使わないとダメな感じだが、単独でシンプルに選べる方が私の好み。この点はENEOSでんきも同様。

業者選びに迷ったら、まずは大阪ガスの電気を選んでおき、その後、他の業者が揃ってきたら切り替えを検討してもいい。

各社が共用するスマートメーターのおかげで、スイッチコストが低くなった。アナログの電気メーターは電力会社しか使えなかったが、デジタル式のスマートメーターは、ネットワーク経由で、色々な業者がそれを共用できるので、電気を販売する業者を変更するのが容易だ。解約金を設定している業者もあるが、その額は2,000円なので、スイッチコストとしては格安だ。


スマホと電気のセット割引がお得なように感じやすいが、単独で電気サービスを提供するENEOSでんきが最もリーズナブルだ。必ずしも「セット=お得」とは考えないほうがいい。むしろ、セット料金に拘らないほうがお得になるんじゃないか。

規模の経済性を発揮すれば、電力会社が料金競争で圧勝しそうだが、色々と制約があるので、そうはなっていない。

お得といっても、各社ともさほど大きな差は無く、誤差程度の違いしかない。毎月、毎年の電気料金に比べて、割安になる料金は微々たるもの。


じゃあ、どこがいいの?

関西地域に住んでいるならば、大阪ガスの電気が選択肢としては有力か。auでんきとeo電気は関西電力に気を使った内容になっているので決め手に欠ける。ソフトバンクでんきはeo電気に似た内容であり、枠が余ると1kWhあたり10ポイントに変えられてしまう点も気になる。

ENEOSでんきを選べればベストだけれども、2016年4月時点では関西でサービスインしないようなので残念。