2016年1月19日
値下げしたと見せかけるスマホの学割は上手い方法。
2016年の学割は、本体価格を値引きするのではなく、通信枠を増加させるのが特徴だ。
学割が適用されると、データ枠が毎月5GBなり6GB追加される。例えば、auの場合、データ定額5を選択すると、毎月の通信枠が合計で10GBになる。
データ定額5の料金が5,000円なので、月間の通信枠が10GBになると、1GBあたりの料金は実質で月額500円になる。
通信枠を増枠すると、1GBあたりの価格を引き下げたように感じさせるのが今回の学割の狙い。料金が安いMVNO回線と較べても高くないと感じさせるには、データ枠の増加は良い方法だ。
2016年1月時点だと、MVNO回線の料金相場は、3GBで月額1,000円程度。1GBあたり300円強となる。一方、学割を適用した通信会社のプランでは1GBあたり500円。しかも、auの場合は、iPhoneを契約するとデータを増量するキャンペーンもあり、これも学割と一緒に適用されるとなると、通信枠は月間11GBとなる。その結果、1GBあたりの料金が約454円になる。
さらに、3つのパス系サービスも指定期間の間は割引になり、実質的な料金はさらに下がる。
docomoやソフトバンクモバイルも似たような学割で、料金を値下げすると収益は減るが、通信枠を増やしても収益にはほとんど影響しないのが通信サービスの特徴。
例えば、月に通信枠を5GB使う人が、利用する通信量を追加的に1GB増やし、月間で6GBになったとしても、通信会社が負担する限界費用はほぼゼロだ。多く使おうがチョットだけ使おうが、生産に要する費用はほとんど変わらない。
限界費用が逓減するため、値下げするよりも通信枠を増やすほうが通信会社にとっては好都合なのだ。毎月の料金はそのまま、通信枠を増やしても費用はほとんど増加しないし、ユーザー全員が上限まで使うわけでもない。割引は確実に影響するが、通信枠の増量は利用状況次第なので、利用されなければいわゆる退蔵益となる。
数年前は、多くのユーザーが月間1GB未満の通信量で、あまり使わない人が多いとアピールしていたのに、今回の学割施策を発表する際には、たっぷり使っているユーザーが多いように説明している。今回の施策にユーザーを引き込むには、「みんなイッパイ使っているよ」とアピールしないといけないので、仕方ないが。
以前、データプランを利用しているユーザー向けにデータ枠を増枠するようにブログで提案していたが、月間1GB上乗せするぐらいならば通信会社は容易に実行できる。
ただ、データプランは総合プラン(音声+データ)に比べて料金が安いので、通信会社はなるべくデータプランではなく総合プランを選んで欲しいと考える。そのため、データプラン向けに通信枠を増やしたがらない。
キャンペーンで一時的にデータプランの通信枠を増枠することはあるものの、恒常的に通信枠を増やすような施策は実施していない。月額1,700円(データプランの基本料金)という何だかよく分からない料金を意味あるものとするために、データ枠を増量すればユーザーも納得するだろうが、そうしないのが不思議。
「キャリア経由の契約はMVNOと較べても高くはないですよ」とアピールするのが今回の学割の主な目的なので、その目的は達していると思う。
ただ、36ヶ月割引だの、25歳までずっと割引だの、随分と割引期間が伸びているのが気になる。
今は2年契約が基本だが、契約期間を3年や4年に引き延ばせば、一月あたりの料金を低くできる。通信料金を引き下げよと政府から要求されている現状を考えると、3年契約や4年契約という選択肢を用意し、毎月の料金を3,000円ぐらいまで引き下げ、「ほら、料金を安くしましたよ」とアピールするための下準備をしているのではないかと勘ぐってしまう。