2015年9月22日

煙幕を張る通信会社。機種変更アップグレードプログラムはお得なのか。


iPhone6が発売された時期から、端末下取りが当たり前になり、2015年に発売されるiPhone6Sを契機に、機種変更を優遇するプログラムが開始された。

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どちらのプログラムも、ある程度まで端末を使った後に、機種変更すると、分割代金の残りを免除するという仕掛けになっている。新しいiPhoneを常に使いたい人にはお得なように思えるメニューだが、本当にお得なのかどうか。

ウェブサイトを見ても、お得なのかどうかがパッと分からないので、「こりゃ、また厄介な仕掛けを用意したな」という感じ。




クルマやデジカメの残価設定型プランと同じ。


クルマやデジタルカメラを購入する際にも、今回の機種変更アップグレードプログラムと似たような仕組みがある。残価設定型プランと言われるが、ある程度まで乗ったクルマを下取りに出すと、残った価値の分だけ次に購入するクルマの頭金として使えるというもの。例えば、100万円で購入したクルマに5年乗り、下取りに出すと20万円で引き取ってもらえ、次に購入するクルマの費用に充当できる。

要するに、分割払いから更に毎月の負担を軽減する仕掛けが残価設定型プランの特徴。

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デジタルカメラでも同じ仕組があり、SONYでは残価設定型プランでデジカメを購入できるようにしている。

デジタル一眼カメラαボディ/レンズの新しい買い方「残価設定クレジット」|ソニーの公式通販サイト ソニーストア(Sony Store)デジタル一眼カメラαボディ/レンズの新しい買い方「残価設定クレジット」|ソニーの公式通販サイト ソニーストア(Sony Store)

ケータイの価格もドンドンと高くなってきて、10万円を超えるものもあるので、負担感を軽減するために、スマホを購入する際にも残価設定型プランを応用したプログラムを作ったわけだ。トヨタの「ご購入サポート」という名称だが、これはdocomoの端末購入サポートに名称が似ている。携帯会社は自動車会社を参考にしているんじゃないかと思えるぐらいだ。




仕掛けが分かりにくい。


auのプログラムとdocomoのプログラムはよく似ているが、ウェブサイトの説明を見て、パッと理解できたら大したもの。

19ヶ月目、キャンペーン中にプログラムに加入した場合は13ヶ月目に機種変更すると、その後の分割代金を免除される。ただし、免除されるといっても、一括で免除されるものではなく、機種変更後もアップグレードプログラムに継続して加入している事が条件になる。途中でプログラムを離脱すると、残りの期間の分割代金が請求される。そのため、このプログラムを使うには、月額300円の加入料をずっと支払う必要がある。

機種変更したら分割代金の残りが無くなり、もうプログラムは不要だと思って解約してしまうと、免除されるはずの分割代金の残りが請求されてしまうようになっている。契約者をガッツリと囲い込み、MNPではなく機種変更へ誘導し、高い買い物をさせる。供給者にとってはよく出来た仕組みだ。

もちろん、機種変更は強制ではないものの、2年毎にキャリアを乗り換える人はプログラム料が無駄になる。

分割代金という言葉が登場しているので、必然的に割賦契約で端末を購入することになる。機種変更で機種を割賦購入する人を対象にしているのですが、一括で購入したらどうなるんでしょうね。一括払いだと残債が無いので、(実際には存在しない)分割代金が支払われていると仮定して免除するなんてことはできそうにもないですし、仮にできたとしても、どのように還元するのかが不明。機種変更後の料金から割引する方法もあるけれども、それだと割り引きが大きくなりすぎる。

いや、一括で買った場合は、機種変更時に一括で値引きすればいいだけなので問題ないのか。

その後、ウェブサイトを読み込んでいると、au、docomoともにアップグレードプログラムを利用するには、割賦契約で機種変更が必要になる。auのウェブサイトでは、象機種を割賦契約(24カ月)にてご購入と同時に本プログラムにお申し込み、と明記されている。docomoのウェブサイトでも、プログラム料金を一定期間お支払いただくと、24か月の割賦支払終了を待たずに気軽にお得に最新機種に機種変更していただくことができます、と書かれているので、こちらも割賦で機種変更が必要と解釈すべき。

最新機種を、定価で割賦購入させ、機種を変更させる。これだけだとお得な感じは無いが、13ヶ月目にプログラムを利用でき(新型iPhoneが発売される時期に合わせられる)、それ以降の分割代金約1年分が免除される条件ならば利用する価値はある。今は両社ともにキャンペーンで、プログラムは13ヶ月目から利用できるが、その場合でも7ヶ月分までしか分割代金の残額は免除されない。

機種変更一括で購入する人はアップグレードプログラムは利用できないものの、iPhoneが発売される時は下取りプログラムも同時に実施されるのが恒例化してきたので、使っているiPhoneを下取りに出し、また一括で機種変更すればいい。



auはプランが指定されるが、docomoはプラン指定が無い。


auのプログラムでは、加入する料金プランに指定がある。データ定額かLTEフラットが必要で、これとアップグレードプログラムを合わせて加入することで対象になる。auのアップグレードプログラムを利用する場合は、1,割賦購入、2,LTEフラットなどの指定プランへの加入が必要になる。途中でパケット契約を解除すると、加入条件を満たさなくなるので、アップグレードプログラムも同時に解除となる。

一括購入で端末を機種変更した場合は、アップグレードプログラムは使えないわけだ。


一方、docomoの場合は指定の料金プランは無い(2015年9月22日時点)。

機種購入とXi契約だけが条件であり、プラン指定が無い。
おそらく、この点は修正されるだろう。せっかく契約を固定するチャンスなのだから、パケットパックかシェアパック、シェアオプションを必須にして、データ契約を解除させないように仕掛けてくるはず。このままの加入条件だと、iPhoneを契約し、カケホーダイだけで使っている人も対象になってしまう。

とはいえ、乗り換えではなく機種変更だから、あえて厳格な条件(データ契約を必須にするなど)を設けなくても、端末代金をガッツリと回収できるので、上記の条件のままプログラムを運用しても差し支えは無いとも思える。


1年や2年で使えなくなる代物じゃない。


iPhoneを使っていると、2年程度で使えなくなるものではなく、3年、丁寧に扱えば4年でも使い続けられると感じる。あまりに長い間使っていると、バッテリーが膨張してきて危ないが、少なくとも2年でダメになるほどの製品じゃない。未だにiPhone4Sを使っている人もいるはず。2015年9月にリリースされたiOS9にアップグレードできるので、まだ粘り強く使っている人もいるんじゃないか。

2011年に発売された端末を2015年の段階でアップグレードするのはiOSならでは。Androidなんて1年も経たずにアップグレード対象の端末から外されるなんてザラなので、旧機種に対する扱いはiOSの方が優しい。

使えるものはキチンと使う。こんなモッタイナイ精神を持ち合わせていると、1年そこそこで新しいケータイに変えてしまうなんて何だか後ろめたい。もちろん、壊れたり、動作が明らかに遅くなったならば買い換えるのも良いが、まだピカピカの新古品のようなiPhoneを下取りに出すのはやはり勿体ない。

2年契約が満了するまで待っていると、他社に乗り換えられてしまうから、契約期間が2年に到達する前に機種変更へと誘導し、機種をチェンジさせて、MNPを防ぐ。これがアップグレードプログラムの主な目的。さらに、アプション契約である月額300円のアップグレードプログラムから途中で離脱すると掛け捨てになる仕掛けにしてユーザーが離れ難くしている。月額300円の参加料は一種の人質だ。



機種変更を選択した時点でお得じゃない。


アップグレードプログラムは機種変更を優遇する仕組みだが、機種変更を選択することそのものがお得ではない。残価を使って割引し、煙幕を張ってお得感を演出しているが、まだ新しい機種へ変更するわけだから、端末価格は高いし、機種変更だからキャンペーンも乏しい。

半ば強制的に機種変更するように誘導し、まだまだ使えるものを手放すようにして、無駄な買い物をさせる。

お得にスマホを使いたいならば、このようなアップグレードプログラムには加入せず、2年毎、契約を更新する月が到来したら他社に乗り換えるのがベスト。

2014年まで続いていたdocomoのご愛顧割のように、機種変更を優遇する仕組みはあったが、あのように一括で値引きしてしまうと、ユーザーの離脱を防ぎにくい。話は逸れるが、2014年まであったご愛顧での機種変更だが、もう期待するのは無理だろう。格安で機種変更できる場合には、端末購入サポートを設定してくるだろうから、機種変更一括5,400円とか機種変更一括3,240円などという破格の条件に遭遇する可能性はほぼゼロだ。

ご愛顧割引とは違い、値引き効果を長期間で分散させてユーザーをロックインするアップグレードプログラムは賢い方法ではある。

ただ、供給者にとって都合の良い仕組みは、消費者にとっては都合が悪いもの。

「機種変更を優遇し、長期利用者を優遇せよ」と言う人がいるが、長期利用者ほど2年毎に他社へ乗り換えるべきであって、ジーっと同じ通信会社のケータイを使って不満を言うのではなく、自分が動けばいいだけだ。

すでにアップグレードプログラムは開始されているが、ケータイショップの窓口でチャチャッと説明されて内容を理解できるものだろうか。料金プランをよく理解できない人がアップグレードプログラムがお得かどうかを判断するのは難しい。もし分かるとしたら、相当に頭の動きが早い人か、事前にある程度理解してから契約に来ているかのどちらかだろう。


機種変更を選択した時点でお得じゃない。お得に機種を変更したいならば携帯会社を変えるべきだ。