岡山と言えばきびだんごと言うぐらいきびだんごが代名詞のようになっているが、岡山にはもう1つ魅力がある。倉敷市の美観地区がそれで、今まで行きたいと思っていたものの、先延ばししてきた。ネットでも写真が掲載され、雑誌でも何度も見たが、言葉では表現しにくいような場所で、京都のような雰囲気に似ているが、同じではない。そういう独特な感じが私を惹きつけていた。
調べてみると、大阪から岡山まで新幹線で移動するとたった1時間。在来線に乗って移動すれば、大阪から神戸に行くだけでも1時間近くかかるが、新大阪だと岡山まで行ける。そこで、2015年4月、倉敷 美観地区を散策するため、新大阪から新幹線に乗って岡山まで行くことにした。
岡山駅前にあるウニのような噴水。 |
JR西日本にはe-5489というサービスがあり、これを利用すると、みどりの窓口に行かずとも、ネットでチケットを購入できる。みどりの窓口でチケットを買った経験があるならば分かるが、長距離切符を購入するときは1人あたりの受付時間が長いので、購入待ちの列ができていると、チケットを買うまで随分と時間を要する。
e-5489ならば、新幹線を指定し、座席も指定できる。さらに支払いも済ませられ、あとは駅にある発券機で切符を発券すれば終わり。新大阪駅でも、切符を購入する窓口は人が並んでいたが、発券機は使っている人がなく、すぐに切符を発券できる。望むべくは、スマホに搭載されているNFC機能を使って、チケットレスで新幹線に乗るのがベストだけれども、まだそんな感じにはなっていない。チケットレスというサービスもあるが、J-WESTカードを携帯する必要がったりと、何だか生煮えなチケットレスなのが現状。
乗ったのは新大阪駅発のさくら553号。新大阪駅が始発なので、自由席で乗ることにした。新幹線に乗らなければ、3時間超えは確実だが、新幹線に乗って岡山駅まで行くならば1時間。いや、厳密には1時間はかからず、46分で新大阪から岡山まで行ける。
新大阪駅から出発し、10分程度で新神戸駅に到着。1年ぐらい前か、神戸の北野異人館を見に行ったときに新神戸駅にも寄ったが、あそこまでわずか10分で到着するのだから、いかに新幹線が早いかが良く分かる。新神戸を抜けると、延々と岡山まで止まらず走り、何度もトンネルの中に入った。山が多いためか、頻繁にトンネルに入り、トンネルを抜けている最中は音がゴーッと響き続ける。
岡山駅に到着したのが12時ちょっと前。倉敷まではここからさらに電車に乗る。山陽本線に乗り換えて、西へ向かう。新幹線を降りて、改札を出ると、案内に従って階段を降りていく。山陽本線のホームへは改札を出て3分もあれば着く。この山陽本線、汽笛を鳴らす珍しい車両で、駅に到着するとき、出発するとき、ピーッと汽笛を鳴らす。大阪だとクラクションのようなものをブワーンと鳴らすのだが、山陽本線では汽笛を使うらしい。車両本体も古めかしいもので、色は確か黄土色だった。
岡山駅から4つ目の駅が倉敷駅。想像していたのは、人がごった返すターミナル駅のような雰囲気だったが、ごく普通の穏やかな駅だった。
倉敷駅北口。円形状の広場と時計台がある。 |
倉敷駅は北口にはショピングエリアがあり、イトーヨーカドーや三井アウトレットパークがある。昼食を買うためにイトーヨーカドーに寄ったが、今回は美観地区を訪問するのが目的だったので、ショピングに精を出すのはヤメておいた。
美観地区は倉敷駅の南側なので、もう一度駅の中を通り抜ける。天満屋の看板が目を引く南口で、こちらはタクシー乗り場やバスのりばが主になっている。元町通を南向きに進むと、美観地区入口という丁寧でユーザビリティ溢れる交差点がある。交差点の名前を美観地区入口と決めておけば、観光で来た人は迷わないだろう。
美観地区の中。白い壁、白っぽい屋根で統一されたデザイン。 |
美観地区入口交差点を左に曲がると、そこから美観地区に入る。先に言っておくべきかと思うが、豪華な観光地を想像してここに来ると、想像と実態のズレに違和感を抱くはず。地区という名称の通りだが、広さは半径で300mぐらいであって、遊園地とかユニバーサル・スタジオ・ジャパン、ディズニーランドのようなものも思い浮かべて来てはいけない。素朴で質素な感じが美観地区の良いところで、ワイワイ、キャッキャと楽しむような場所じゃない。例えるならば、中高年のオジサマとオバサマが優雅に散策し、写真を撮る。そんな場所。
美観地区の中。派手な感じは無い。 |
倉敷 美観地区の見どころはどこかと考える人もいるだろうが、テンションを上げて訪問するような場所ではないので、花火大会やアミューズメントパークのような「ココは外せない!」、「これは見なきゃソン!」という場所は無い。建物、雰囲気、景色、それらを一体にして見る場所なので、見どころは全てと言いたい。
建物を見ているだけでも満足できる。 |
路地を見てもいいし、建物を見てもいい。美観地区に入ると川があるので、それを見るのもいい。雑誌ではここの川を撮影した写真が掲載されることが多い。私の感覚では、川よりも、建物や路地、後は建築物の壁も趣があっていい。
壁のデザインがいい。路地が奥に続いている感じも好き。 |
木でできた壁面。触ってみると、焦げた感じの質感だった。 |
倉敷アイビースクエアという施設が地区内にあるが、ここのデザインも個性的でよかった。結婚式場や宿泊施設として稼働しているが、一般客も中に入れる。 駐車場がある東側の入口から入ったが、ここは植物の蔦が壁面に張り巡らされていて雰囲気が良い。
茶色と緑色の組み合わせがいい。 |
中庭。ここも緑の蔦がビッシリ。 |
先程も書いたように、美観地区は半径300m程度の小さなエリアなので、1日で十分に見て回れる。午前中に倉敷に到着し、夕方5時頃には、「あぁ、もう見るべきところは見たし、行くところには行ったから帰ろうか」と自然と口にするはず。
美観地区から少しだけ離れた場所に、重要文化財に指定されている大橋家住宅がある。住宅なのに文化財というと大層な感じだが、倉敷の案内パンフレットにも掲載されている場所で、扱いは美術館などと同等。
美術館やら、ナントカ邸というものもお金を払うと入れるのだけれども、いちいち全部訪問していたらキリがなさそうだったので、大橋家住宅だけ行ってみようと決めた。なぜ大橋家住宅を選んだのかというと、パンフレットを見ていて気になったからというだけ。文化財に指定されているぐらいだから、さぞ立派な家なのだろうと思えたし、美観地区から少し離れた場所にあるのも気になったところ。
大橋家住宅の中。靴を脱げば畳部屋の中に入れる。 |
美観地区交差点を出て、阿知南交差点を左に曲がると、大橋家住宅の入口へ行けるのだが、この入口がとても地味なので、通りすぎてしまう可能性がある。「こちらが大橋家住宅です」、「大橋家住宅まで10m」などと、これでもかと誘導するような仕掛けはなく、入口の門構えがあまりに質素すぎて、一般人の住宅じゃないかと思って通りすぎてしまう人もいるはず。
畳の部屋に絨毯を敷いてテーブルとチェアーが置かれる。 |
入場料は500円。家に入るので、入家料と言うべきかもしれないが。入ると、パンフレットが渡され、約1分ほど大橋家についてのビデオを観せてもらえる。大橋家とはどんな家なのか。どういう人が住んでいたのか。この家の造りとか歴史とか、まぁ色々な内容を1分程度のビデオに凝縮して観ることになる。ちなみに、写真の撮影は自由。
窓から覗く景色も風情がある。この写真は私のお気に入り。 |
ここに限ったことではないが、料金を払って入る場所、快適なことが多い。観光目的で人が集まる場所には有料で入れる施設があり、寺、美術館、文化財施設など、無料で見れる場所とはちょっと違う。手入れや維持費のための資金を集められるので、設備がキレイだし、人も少ない。わずか500円でも、入る人と入らない人がいるので、数百円で入れる場所ならば積極的に入ってみるといい。
大橋家には中庭がある。 |
中庭がある自宅に住んだことが無いので新鮮。 |
大橋家住宅を後にした頃には、時間はすでに夕方の5時を過ぎていた。見たいところは見たので、倉敷駅まで歩いて行き、電車に乗り、岡山駅まで戻ることにした。岡山駅に着いたのが、17時40分、このまま大阪に帰ってもいいのだけれども、まだ明るいので、ここから岡山城まで行き、城を見ることにした。
岡山駅から岡山城まではバスで移動でき、バスに乗れば10分程度。ネットで検索すると、岡山城の観覧時間は17時30分までだから、すでに城の門は固く閉ざされていて中には入れない。
岡山駅前にあった噴水。トゲトゲ。 |
到着したときはすでに夕方の6時、辺りも薄暗くなってきて、人もほとんどいない。城門まで行くと、門は閉まっていて城の中には入れなかったものの、城の周りを散策することはできる。私が城門の近くまで行ったとき、扉がバタンと閉まった音がしたが、おそらく勝手口から誰かが入ったのかもしれない。
閉ざされた岡山城の門。 |
城の中には入れなかったけれども、門の前には広場があり、そこから岡山城を見ることはできた。不気味なほど人がいなくて、夕方6時30分頃にここに来ている人は私だけだった。
突如として、城の門が開き、「クセモノだぁ〜」と日本刀で切られても不思議じゃない雰囲気だった。
門の前にある広場。当時は台所とか部屋とか色々な施設があったらしい。 |