2016年10月27日

授業料を無料にできても、小学校の給食を無料にできない理由。



大阪市が給食費の回収を弁護士委託すると決めた。

給食費に弁護士まで出てくるのは大げさな感じもするが、「払わなくても食べられる」となると、給食費を支払っている人から不満が出るのでやむを得ない。

給食費を無償化するように提案する人もいるが、仮に給食を無料にするとどれぐらいの費用が必要なのか。

2016年10月に放送を開始したドラマ『Chef~三ツ星の給食~』によると、給食は1食で240円らしいので、それを基準に考えてみよう。





小学校では、土日を除いて、月に20日、学校で給食を食べるとすると、月額4,800円になる。月によっては21日になるだろうから、切りの良い数字にするため、1人あたりの給食費は月額5,000円と考える。

次に小学校の生徒数の数を文部科学省の学校基本調査から調べると、生徒数は6,386,207人。

http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2016/08/05/1375035_2_1.pdf
学校基本調査-結果の概要 平成28年度 速報値

月額5,000円 × 6,386,207人 ≒ 319億円/月。

毎月の給食費が319億円で、これが年間だと3,828億円になる。


たかが学校給食だと思って計算してみたら、結構な額だ。1食240円というイメージで計算すると、3,828億円という数字にビックリする。「塵も積もれば山となる」の典型例だ。

もし、小学校の給食を無料にするならば、年間で3828億円の費用を毎年どこからか用意しないといけないが、どうするのか。


公立の学校では、小学校から高校まで授業料が無償化されているが、授業と給食では規模の経済性が違う。

授業料を無料にしているのだから、給食も無料にしたらいいと考えている人もいるだろうが、両者を簡単に同視できない。


教室で授業をしているシーンを思い浮かべて欲しい。1クラス40人に対し、1人の教師が授業を実施している場合。40人に対し授業をしても、10人に対して授業をしても、3人に対して授業をしても、手間は同じだ(限界費用が逓減する)。教える人数が変わっても、教師1人分の人件費が必要なのは変わりない。

そのため、大学の授業では、1つの教室に100人、200人と詰め込んで授業がマスプロ化する。1コマあたりの生徒数を増やしたほうが大学(大手予備校も同じ)は儲かるため、多くの生徒をまとめて教えようとする。


一方、給食の方はどうか。もちろん、給食にも規模の経済性はある。家庭と違って大きな鍋でたくさんのおかずを作れるし、材料も多量に仕入れて単価を安くできる。調理、仕入れという点では規模の経済性を発揮できる。

しかし、人数が増えれば増えるだけ、手間と材料費は比例して増える。40人の生徒に対して1人分の材料では足りない(「1つのパンを40人で分けなさい」では暴動が起こる)ので40人分の材料が必要だし、配膳や食器の準備でも40人分の手間が必要になる。


授業では、サービスの受け手(生徒)が増えてもコストはほとんど増えない。しかし、給食では、生徒が増えるほど、それに比例して費用が増えていく。

そのため、授業料の無償化は実施しやすいものの、給食の無償化は実施しにくい。