2014年8月15日

AppleがiPodをリストラする。

iPodは“衰退”した? iPodの歴史から考える音楽プレーヤーのこれから
http://av.watch.impress.co.jp/docs/topic/20140811_660320.html

 一時期は話題に乏しかったポータブルオーディオ市場が盛り上がりを見せている。ウォークマン「NW-ZX1/F880シリーズ」やiriver Astell&kern「AKシリーズ」など、「ハイレゾ」ブームもあり、かなり高価なプレーヤーやヘッドフォンが販売好調。新規参入も続いている。 
 そんな中で元気が無いように見えるのが、ポータブルオーディオの代名詞的存在といえる「iPod」だ。2014年の新製品としては、リアカメラが復活した第5世代iPod touch 16GBモデルが発売されているが、これは2012年9月発売の第5世代iPod touchのマイナーチェンジ。同じ'12年9月時に発表の第7世代iPod nanoも現役で、実質的にほぼ2年モデルチェンジが行なわれていない。 
(中略) 
 iTunes Storeという最大規模の音楽配信サービスと、優れた製品で人気を集めてきたiPodだが、この2年ほどは、大きなムーブメントを起こせておらず、相対的にiPodの魅力は低下していると感じているのは筆者だけではないだろう。
 
(中略) 
 特に売上高を見れば、Appleがより単価の高いiPhoneやiPadに集中し、iPodに力が入らない理由もよくわかる。だが、一方で7万円を越えるウォークマンや30万円に迫るAK240のような高付加価値製品がAppleから生まれなかったのも事実だ。高いブランドイメージや高付加価値製品に強いAppleが、iPhone投入以降に「音楽プレーヤー」としてのiPodの魅力を訴求できていない一例といえる。

2004年に発売されたiPod miniをきっかけにAppleが知名度を急激に向上させたのが懐かしい。初期型のiPodは何の用途で使う道具かよく分からなかったし、値段も高額だった。それでも実際に使っている人はいたし、その人を見て「あぁ。音楽を入れて聴くために使うのか」と知ったぐらいマイナーなアイテムだった。

しかし、iPod miniが登場すると、急にiPodユーザーが増えて、音楽を聞く人はみんなiPod miniを持っているような状況だった。小型かつ多色展開したので、特に女性からの支持が多かった。初期型のiPodは白色だけだったし、iPod miniに比較すると大きかったし、重たかった。さらに、デザインもまだ洗練されておらず、野暮ったい感じだった。




iPod miniが普及するまでは、MDプレイヤーが主流で、ミニコンポでも携帯プレイヤーでもMD対応のものが多かった。MDが登場した頃は、CDよりも大容量で、プラスチックケースに入った状態で取り回せるので、ディスクに傷が入る可能性も低かった。そのため、私が高校生の頃はMDの全盛期で、常にMDプレイヤーを持って音楽を聞いているヤツもいた。

その後、ディスクを使わないiPodが登場し、瞬く間にMDは音楽市場から姿を消していき、2014年の今ではもう伝説と言っていいぐらいの遺物になっている。カセットテープの代わりに使うにはMDはとても便利な記録媒体で、その点では重宝した。


上記のウェブサイトでは、iPodが衰退したかのように指摘されているけれども、iPodが衰退したのではなく、AppleがiPodを衰退させたと表現する方が実態に合っている。

iPodのような携帯電話を作ればヒットするだろうという発想で作られたのがiPhoneで、いずれはiPhoneがiPodに取って代わる予定だったはず。いつまでもiPhoneとiPodを併売し続けるつもりはなく、いつかの時点でiPodをオワコン状態にするのがAppleのビジョンだった。

2014年時点では、もうスマホで音楽プレイヤーの代替が完了しているので、いまさらポータブル音楽プレイヤーを作るのは時代の流れに合わない。iPhoneであれ、Xperiaであれ、GALAXYであれ、音楽を聴くには十分な性能を有しているので、あえて単独で音楽プレイヤーを用意しなくてもいいはず。


データを見れば、さもIPodが下火になったかのように思えるが、iPodはiPhoneの中に入っているので、Apple自身が意図してiPodを終わらせたと考えるのが自然。他社の音楽プレイヤーにiPodが押されているのではなく、ユーザーが音楽プレイヤーからスマホへシフトしたので、音楽プレイヤーの市場が縮小し、iPodの販売台数も減ってきたというのが事の顛末。


2万円も3万円もする音楽プレイヤーを買わず、格安で購入できるスマホに音楽を入れて聴く方が合理的。音楽だけでなく、ネットも電話も、各種のアプリも使えて、スマホはまさにオールインワンな道具なのだから、単機能の音楽プレイヤーをわざわざ使うこともない。

もしiPodを残すとすれば、それはiPod Touchだけ。iPod Touchは通信機能を持つので、他のiPodとは違い、iPod Touchだけを販売し続ける可能性はある。Wi-Fi環境に限定してネット接続できるので、通信費を気にしないで使えるのも良いところ。通信費がネックになってスマホを持ちにくい小学生や中学生にはiPod Touchはオススメ。

Wi-Fi回線も、有料のスポットが多いけれども、セブン-イレブンのように無料で使えるスポットがあるし、空港やホテルだと無料のWi-Fi回線を用意しているところが多いので、iPod Touchでもそれなりに使える。

音楽プレイヤーの高付加価値製品がAppleから登場しないとの指摘については、すでに高付加価値製品であるiPhoneがある。iPodの上位機種がiPhoneという位置付けなので、高付加価値製品はキチンと存在している。

2014年の今、あえてiPodの魅力を高める必要はないし、iPodにテコ入れする必要もない。テレビCMでも、iPhoneとiPadのCMは流れるがiPodのCMは流れない。利益が多い製品に注力しているという理由もあるが、Apple自身に役目を終えたiPodを売る気はもうあまり無い。

iPhoneがiPodを飲み込むようにして、自社製品で自社製品を駆逐していく。Appleなりのリストラだと私は思う。