2014年9月22日

時代の流れに逆らう高学歴女子 - 高学歴女子の貧困 女子は学歴で「幸せ」になれるか?


高学歴女子の貧困 女子は学歴で「幸せ」になれるか? (光文社新書)



パイプラインシステムを通ってきた高学歴女子。

高学歴なのになぜ貧困なのか。学歴が高ければ経済的に恵まれた生活を送れるだろう。そう思っている人は少なくない。確かに、中卒よりも高卒、高卒よりも大卒と、学歴は高いにこしたことはない。あって困ることはない、それが学歴だと思える。しかし、現実は、学歴が将来を保証するわけではなく、場合によっては高学歴ゆえに将来の選択肢を少なくする。

随分と前のことだが、「パイプラインシステム」という言葉を見たことがある。パイプラインというのは、石油や天然ガスを遠くの目的地まで送る管のこと。そのパイプラインを比喩で用い、学歴にパイプラインシステムという言葉を当てはめたのが私が見たもの。ちなみにパイプラインシステムという言葉を見たのは、確か学生の頃の小論文の問題文に書かれていたものを読んだのがキッカケ。

学歴は石油や天然ガスじゃないから、パイプラインとどんな接点があるのかと思うかもしれないが、小学校→中学校→高等学校→大学→大学院→職業というように、パイプの中を左から右に流れるように、人が学歴を身につけていく。こういう仕組みが以前はあったけれども、最近は目詰りしてしまってうまく機能していない、だから問題だ。というのが小論文の中身だった気がする。



左から右に流れるようにうまくいくのは学生の間だけ。高校を卒業した後、大学を卒業した後、大学院を卒業した後、その先はもうパイプは無い。管から流れてくる石油のごとく職業まで流れてくると思ってしまう人もいるけれども、学校をでたらもうそこはパイプの外。まさに『国境の長いトンネルを抜けると雪国であった』川端康成の『雪国』の始まりの一文のような世界が広がっている。トンネルとパイプラインが何だか似ていて、不思議な感じがする。

学生の頃は暗い世界。そこを抜けると、白い世界が広がっている。暗い世界は黒くて、何色を塗ってもかき消される。青色を塗りたいと思っても黒に。緑色を塗っても黒に。ひたすらかき消される世界だけれども、そこを抜ければ白い世界になり、自分が思うような色で世界を塗っていい。青でも、緑でも、紫でも、好きなようにどうぞ。

ベルトコンベアーに乗っているような人生は楽だし、パイプラインを通る天然ガスのように流れるがままに生きるのも気楽かもしれない。しかし、それだと、あえて自分が生きている必要がないんじゃないかと思えてしまうんじゃないか。流れるように人を作れるならば、代わりの人間はたくさんいるはずだから、あえて自分じゃなくてもという想いを抱いてしまう。


「高学歴女子の叫び」から「女子の叫び」へ。

高学歴女子が主役なのだけれども、読んでいると、高学歴じゃない女子まで対象に含めている部分もあり、中には「ただの八つ当たりなんじゃないか?」と思えるような部分もあり、なかなかの負のオーラーをまとった本に仕上がっている。

高学歴なために、研究職での仕事を求めるものの、非常勤の講師にしかなれず、非常勤の罠から永久に抜け出せない。そういう仕組みに対してオカシイと主張するのが本書の核心部分。

大学に限らず、フルタイムの社員なり講師なり職員になれば、多少の手抜きをしてもその立場を失うことは無いだろうし、地位も安定しているはず。フルタイムではない雇用形態で働くと、そこからフルタイム雇用に切り替えるのは色々と手間や時間がかかるのは、大学も企業も同じ。


不思議なのは、なぜあえて大学の研究職にこだわるのかという点。確かに、有名大学の大学院を出たり、東京芸術大学の出身者だと、何らかのプライドというか、コダワリのようなものがあるようで、どうしても大学で研究職に就きたくなるらしい。

大学の先生にならなくても、収入を得る方法は多々あるし、わざわざ狭き門を潜ろうとする努力ができるならば、他の分野の仕事でも十分に成果を出せそうな気がする。




時代の流れに乗って仕事をする。

2014年時点の商売環境だと、芸大生にオススメの仕事がある。それは、私にはおそらく難しい仕事なのだけれども、LINEスタンプを作成して販売するという仕事。LINEを使っている人ならば知っているはずだけれども、LINEスタンプというのはLINE上でメッセージをやりとりするときに使える画像のこと。メッセージはテキストがメインだけれども、LINEはテキストだけでなく画像も使えるので、表現の幅が広い。

https://creator.line.me/ja/


LINEスタンプは1個100円(価格の設定にはある程度の幅があるはず)で販売でき、製作者へのロイヤルティは50%。例えば、100円のスタンプが1,000個売れたら、10万円なので、ロイヤルティは5万円になる。この計算例だけだと、「大したことはないんじゃないの?」と思うかもしれないが、スタンプは販売数量に制限がないし、無限に供給できる商品だから、在庫や自分の労働時間がネックにならない。

イラストレーターなどで画像を作成するのだろうけれども、このような作業だと芸大生ならば得意な人は多いんじゃないか。ノートの端っこにイラストを書く人とか、パラパラ漫画を作ったことがある人とか、手空きの時間ができると何か絵やイラストを書きたくなる人などにはオススメ。

他にも、スマホアプリ用のアイコン作成も仕事にできるし、ウェブサイトの挿絵で使うイラストや絵を作成して販売してもいい。写真が好きならば、撮影した写真のデジタルデータを販売できるウェブサイトもある。

それでも「そんな細々とした仕事ではなく、大学の研究職に就きたい」と思う人はいるかもしれないが、職業を1つに限定するようなルールは無いし、人間1人につき職業は1つまでという量的な制限もない。自分の能力をどうやったら収益化できるかを考えて、収入を複線化した方が仕事に変化があるし、飽きにくい。さらに、収入を複線化すると、経済的な立場も安定する。


こだわりは確かに大切だけれども、こだわり過ぎると自分の選択肢を少なくする。高学歴なんだから研究職だとこだわらず、研究職は選択肢の1つにとどめておいて、他の道も模索した方が望ましい道に進めるのではないかと思う。





高学歴女子の貧困 女子は学歴で「幸せ」になれるか? (光文社新書)