2014年4月19日
『ディズニーの現場力』 駐車場のラインを斜めに引く。
ディズニーランドではキャストがどのように働いているのか。どういう仕組みで仕事が行われているのか。実際に中で働いた経験がある筆者が書いたのが『ディズニーの現場力』。
プロローグで紹介されているエピソードから興味を惹くように書かれていて、読み手の気持ちを考えているように思えた。プロローグは、「なぜ、なくしたはずの指輪がすぐに見つかるのか?」という内容。
ディズニーの現場力
ディズニーランドに来ていたゲストが何らかの理由で指輪をなくし、キャストがそれを探すのだけれども、ディズニーランドではゴミの捨て方に工夫があって、その工夫のために指輪を見つけることができた。ディズニーランドでは、決まった時間になると、袋が一杯になっていなくてもゴミ袋を回収し、持ち帰ったゴミ袋は指定の位置に置くようになっている。
ゴミを集める部屋には、回収時間と回収場所ごとに指定されたマス目があらかじめ用意されていて、そのマス目に指定の回収時間に回収したゴミ袋を入れていく。こうすることで、いつどこのゴミ箱から回収されたゴミなのかが分かる。そのため、ディズニーランドのどこらへんで、いつ指輪がなくなったのかが分かれば、どのゴミ袋を調べればいいかが見当が付く。
普通の感覚でゴミを集めていると、ゴミ袋が一杯になったら回収すると判断するところで、「まだ袋が一杯になっていないのに回収したらもったいない」などと感じたりする。確かに、事業所のゴミは袋単位で回収費用が発生するし、ゴミ袋もなるべくたくさん詰め込んだほうが使用する枚数も少なくて済む。しかし、袋が一杯になるまでゴミが溜まるのを待ってしまうと、今回のように何か遺失物が発生したときに見つけにくくなる。
ゴミ箱の位置、回収時間、回収したゴミ袋を置いておく場所、これらを決めているからこそ、なくした指輪を発見できたのだと。
ゴミ袋は確かにもったいないかもしれないが、捨てるときは何袋かを1袋にまとめて捨てれば、費用を節約できる。ゴミ袋は1枚10円とか20円ぐらいだろうけれども、その費用を負担すれば、ゲストから思いがけないお礼を言ってもらえることを考えれば、さほど高いものでもなさそう。
最も印象に残った部分は、駐車場の話。96ページに掲載されている内容なのだけれども、ディズニーランドの駐車場では車両の区分線が斜めに引かれているらしい。私はディズニーランドに行ったことがないので知らないけれども、駐車場にもちょっとした工夫を凝らしている。
普通の駐車場ならば、直線にラインが引かれていて、そこにクルマが停まるようになっている。しかし、ディズニーランドの駐車場は、ラインが斜めになっていて、ゲストが車を停めやすいように配慮している。ラインが斜めになっていると、車を停めやすく、事故も起こりにくいという効果があるらしい。また、車を止めるときに切り返しが必要ないので、駐車場の中での渋滞も減らせる効果がある。
私は斜めに線を引いている駐車場を見たことがない。直線で車が入れそうな幅で線が等間隔で引かれている。それが普通だと思っていた。
ただ、線を斜めに引くと、収容できるクルマの台数が減ってしまう。だから、駐車場としては効率が悪くなる。しかし、ディズニーランドの駐車場はラインを斜めに引く。
他の駐車場でも、ラインを斜めに引けば、駐車場としての価値を高めて月極の利用者を増やせるんじゃないか。「あの駐車場は使いやすい」と思ってもらえれば、常に満車状態で駐車場を経営できるかもしれない。
ディズニーランドの業務マニュアルは、サービスの品質を一定にするために、ずいぶんと細かく決められている。もちろん、マニュアルの内容だけをこなすのがディズニーランドでの仕事ではないけれども、読んでいて私は息苦しさを感じた。
マニュアルや指示は骨組みだけで、肉付けは自分でやっていい。そういう職場は私に合っている。しかし、肉付けまである程度マニュアルで決めてしまうディズニーランドは私には合わないだろうと思えた。。